Quick Answer
炭化ケイ素(SiC)は高硬度・高熱伝導を特徴とする化合物で、主に高温・高圧環境での研削や半導体に使用されます。 一方、酸化アルミナ(Al₂O₃)は優れた耐摩耗性と安定性を持ち、研磨材・耐火材・セラミックスなどに広く用いられています。 両者は用途が重なる部分もありますが、硬度・熱伝導率・コスト・適用分野で明確な違いがあります。
炭化ケイ素(SiC)とは
炭化ケイ素(Silicon Carbide, SiC)は、ケイ素(Si)と炭素(C)からなる共有結合性化合物です。 天然にはほとんど存在せず、人造的に製造されます。硬度はモース硬度9.2〜9.5と非常に高く、 熱伝導率も高いため、高温研削材・耐火材・半導体基板として利用されます。
- 化学式:SiC
- 比重:約3.21 g/cm³
- 融点:約2,700°C(分解温度)
- 熱伝導率:約120–200 W/m·K
- 電気特性:ワイドバンドギャップ半導体(3.2 eV)
黒色炭化ケイ素は鋳鉄・非金属研磨に、 緑色炭化ケイ素は硬質材料の精密研磨に使用されます。
酸化アルミナ(Al₂O₃)とは
酸化アルミナ(Aluminum Oxide, Al₂O₃)は、アルミニウムの酸化物であり、 天然では「コランダム」として存在します。人工的にはボーキサイトを電気炉で溶融して製造され、 白色溶融アルミナ(WFA)や褐色溶融アルミナ(BFA)などの形で流通しています。
- 化学式:Al₂O₃
- 比重:約3.9–4.0 g/cm³
- 融点:約2,050°C
- 熱伝導率:約25–35 W/m·K
- 電気特性:絶縁体(高い絶縁耐力)
酸化アルミナは、研磨紙・研削砥石・耐火れんが・セラミック基板など、機械・電子・化学産業で幅広く使用されています。
炭化ケイ素(SiC)と酸化アルミナ(Al₂O₃)の主な違い

比較項目 | 炭化ケイ素(SiC) | 酸化アルミナ(Al₂O₃) |
---|---|---|
化学式 | SiC | Al₂O₃ |
モース硬度 | 約9.2〜9.5 | 約9.0 |
比重 | 3.21 g/cm³ | 3.9〜4.0 g/cm³ |
融点 | 約2700°C(分解) | 約2050°C |
熱伝導率 | 120–200 W/m·K | 25–35 W/m·K |
電気特性 | 半導体 | 絶縁体 |
耐薬品性 | 酸・アルカリに強い | 酸に弱いが耐熱性高い |
主な用途 | 研削、ブラスト、半導体、耐火材 | 研磨紙、セラミック、耐火材、吸着剤 |
コスト | 高価(原料・製造コスト高) | 比較的安価 |
一般的に、炭化ケイ素は「高温・高硬度・高効率」用途に向き、 酸化アルミナは「汎用・コスト重視・安定性」用途に適しています。
用途比較:どちらを選ぶべき?
炭化ケイ素(SiC)の主な用途
- 高温・高圧環境下の研削(鋳鉄、超硬合金)
- 半導体ウェーハ(SiC MOSFETなど)
- サンドブラストメディア(硬質金属・石材処理)
- 耐火れんがや炉材の原料
酸化アルミナ(Al₂O₃)の主な用途
- 研磨布紙・研磨粉
- 耐火セラミックス(炉材・断熱材)
- 吸着剤・触媒担体(活性アルミナ)
- 電子部品基板・絶縁材料
研磨・ブラスト用途ではSiCが好まれますが、 白色溶融アルミナ(WFA)は 仕上げ研磨や電子部品用に理想的です。
製造方法の違い
炭化ケイ素の製造(アチソン法)
高純度シリカ砂と石油コークスを電気抵抗炉で2,200〜2,480°Cに加熱し、 36時間以上の高温反応でSiCを生成します。
酸化アルミナの製造(ボーキサイト精製・電融法)
ボーキサイトを苛性ソーダで処理してアルミナ水酸化物を抽出し、 電弧炉で溶融・冷却してAl₂O₃結晶を得ます。 白色アルミナ(WFA)は高純度グレード、褐色アルミナ(BFA)は鉄分を含む高靭性グレードです。
FAQ(よくある質問)
Q1. 研磨用途ではどちらが優れていますか?
高硬度材料の荒削りにはSiC、仕上げ研磨やコスト重視ならAl₂O₃が適しています。
Q2. 耐火材にはどちらを使うべきですか?
高温強度を求める場合はSiC、断熱・安価重視ならAl₂O₃が一般的です。
Q3. 半導体分野ではどちらが使われますか?
SiCはワイドバンドギャップ半導体として、次世代EV・パワーデバイスに広く使用されています。
まとめ
炭化ケイ素(SiC)と酸化アルミナ(Al₂O₃)は、どちらも高性能な研磨材・耐火材ですが、 特性・コスト・適用分野に明確な違いがあります。 SiCは高温・高負荷の分野で活躍し、Al₂O₃は幅広い産業における汎用材料として利用されています。
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