シリコンカーバイド砥石とは: 炭化ケイ素(SiC)を研磨材として使用した砥石で、モース硬度約9.5の高硬度と鋭い切削力を持ちます。鉄系材料には不向きですが、非鉄金属、鋳物、ガラス、セラミックスの研削に広く利用されます。
シリコンカーバイド砥石の基本情報
シリコンカーバイド(Silicon Carbide, SiC)は人工的に製造される研磨材で、炭化ケイ素を主成分とします。 高硬度・耐摩耗性を持ち、結晶が鋭利であるため、砥石に加工すると高い切削性能と短時間加工が可能です。
特徴と物性
- 化学式:SiC
- モース硬度:約9.0–9.5
- 比重:3.2 g/cm³
- 融点:2700℃以上(分解点)
- 色調:黒色または緑色
- 特徴:硬く脆い、鋭利なエッジを持つ
種類(黒色SiC砥石・緑色SiC砥石)
種類 | 特徴 | 用途 |
---|---|---|
黒色SiC砥石 | 不純物を含み靭性が高い | 鋳鉄、非鉄金属、石材の研削 |
緑色SiC砥石 | 高純度・高硬度・鋭利 | ガラス、セラミックス、硬脆材料の精密加工 |
用途と応用分野
- 非鉄金属研削: アルミニウム、銅、真鍮など。
- 鋳物加工: 鋳鉄や鋳鋼のバリ取り、仕上げ。
- ガラス加工: ガラス板の研削、光学レンズの前加工。
- セラミックス: 焼結体や磁器の加工。
- 石材加工: 大理石や花崗岩の切断・研磨。
アルミナ砥石との比較
項目 | シリコンカーバイド砥石 | アルミナ砥石 |
---|---|---|
硬度 | 高い(9.5) | やや低い(9.0) |
靭性 | 低い(脆性) | 高い(耐衝撃性あり) |
加工対象 | 非鉄、鋳物、ガラス、セラミックス | 鉄鋼、一般金属 |
仕上げ性 | 鋭利な切削・精密加工 | 安定した研削・長寿命 |
選定ガイド
シリコンカーバイド砥石を選ぶ際のポイント:
- 対象材質は非鉄か? → SiC砥石が適する。
- 精密加工か粗研削か? → 緑色SiC(精密)、黒色SiC(粗加工)。
- コストと寿命のバランス → アルミナ砥石より短寿命だが、切削力は高い。
よくある質問(FAQ)
シリコンカーバイド砥石は鉄鋼の加工に使えますか?
鉄鋼は靭性が高く、SiC砥石は摩耗が早いため不向きです。鉄鋼加工にはアルミナ砥石を推奨します。
緑色と黒色のSiC砥石の違いは?
緑色は高純度・高硬度で精密研磨に、黒色は靭性がありコスト効率の良い汎用用途に適します。
SiC砥石とダイヤモンド砥石の違いは?
ダイヤはより硬く高価、超精密加工に使用。SiCはコスト効率が高く、非鉄やガラス研削に最適です。
参考文献・規格
- JIS R 6240: 研削砥石の規格
- FEPA Abrasives Standards
- ASM Handbook: Grinding Technology
- ISO 525: Bonded abrasive products