Quick Answer
炭化ケイ素(SiC)は用途によって大きく2種類に分けられます。 陶瓷炭化ケイ素(Ceramic SiC)は、耐熱性・耐摩耗性を生かした 構造材料・耐火材・機械部品向け。 一方、半導体炭化ケイ素(Semiconductor SiC)は、電気特性を活かした パワーデバイス・EV・エレクトロニクス向けです。 両者は化学式こそ同じ(SiC)ですが、純度・結晶構造・製造方法・応用分野が全く異なります。
炭化ケイ素(SiC)の基本構造
炭化ケイ素(Silicon Carbide, SiC)は、ケイ素(Si)と炭素(C)が1対1で結合した化合物です。 高硬度(モース硬度9.2〜9.5)、高融点(約2700°C)、高熱伝導率(120〜200 W/m·K)など、 優れた物理的・化学的特性を持ちます。
同じSiCでも、製造目的によってセラミックス用途と半導体用途に分化し、 その特性・製造精度・結晶構造が大きく異なります。
陶瓷炭化ケイ素(Ceramic Silicon Carbide)とは
陶瓷炭化ケイ素は、主に機械的強度・耐熱性・耐摩耗性を活かすために製造される炭化ケイ素です。 化学的純度よりも構造強度・粒径・焼結密度が重視されます。
主な製造方法
- 常圧焼結法(SSiC):粉末を焼結して緻密な構造を形成。耐摩耗部品に多用。
- 反応焼結法(RSiC):炭素とSiの反応を利用。多孔質・軽量で耐熱部材に適用。
- ホットプレス焼結法(HPSiC):高温・高圧下で焼結し、最高強度を実現。
物理的特性(代表値)
項目 | 典型値 |
---|---|
密度 | 3.10〜3.21 g/cm³ |
熱伝導率 | 120〜200 W/m·K |
曲げ強度 | 400〜600 MPa |
弾性率 | 410 GPa |
耐熱温度 | 1600〜1800°C |
主な用途
- 機械部品(シールリング、ベアリング、ノズル)
- 耐火材・炉材
- 半導体製造装置用治具(サセプタ、ボートなど)
- 防弾・航空材料、熱交換器部品
半導体炭化ケイ素(Semiconductor Silicon Carbide)とは
半導体炭化ケイ素は、電気特性を制御して電子デバイス(SiC MOSFET・SBDなど)を製造するための高純度材料です。 高耐圧・高温・高周波動作が可能な「ワイドバンドギャップ半導体」として注目されています。
結晶構造と多形(Polytype)
- 4H-SiC:最も広く使われる半導体用構造。高電子移動度と耐圧性を両立。
- 6H-SiC:旧世代。現代では主に研究用途。
- 3C-SiC:立方晶構造。低コスト化に期待されるが結晶欠陥が多い。
電気的特性
特性項目 | 数値(4H-SiC) |
---|---|
バンドギャップ | 約3.26 eV |
絶縁破壊電界 | 約3 MV/cm(Siの10倍) |
電子移動度 | 約900 cm²/V·s |
熱伝導率 | 490 W/m·K(Siの3倍) |
動作温度 | 最大600°C以上 |
主な用途
- 電動車(EV)のインバータ、充電装置(OBC)
- 太陽光・風力発電のパワーモジュール
- 5G通信・高周波アンプ
- 宇宙・航空電子機器
陶瓷炭化ケイ素と半導体炭化ケイ素の主な違い
比較項目 | 陶瓷炭化ケイ素 | 半導体炭化ケイ素 |
---|---|---|
主な目的 | 構造材・耐熱材・機械部品 | 電子デバイス・パワー半導体 |
純度 | 約99% | 99.9999%(6Nクラス) |
結晶構造 | 多結晶・焼結体 | 単結晶(4H-SiCなど) |
製造方法 | 焼結・反応焼結 | PVT法・CVD法 |
特性重視 | 機械強度・耐摩耗性 | 電気性能・耐圧・熱伝導 |
代表用途 | セラミック部品、耐火材 | SiC MOSFET、SBD |
コスト | 比較的安価 | 高価(製造難度が高い) |
用途比較:どちらを選ぶべき?
産業機械・耐火用途では陶瓷SiCが最適。 一方、電力変換・電子制御・エネルギー効率が重視される分野では半導体SiCが選ばれます。
- 陶瓷SiC:ポンプシール、熱交換器、炉心管、サセプタなど。
- 半導体SiC:EVインバータ、DC-DCコンバータ、5G RFモジュールなど。
CanAbrasiveでは、研磨・セラミック向けの 緑色炭化ケイ素や 黒色炭化ケイ素を安定供給しており、 高純度SiC材料にも対応可能です。
FAQ(よくある質問)
Q1. 半導体SiCはセラミックSiCより高価なのはなぜ?
単結晶成長が非常に難しく、PVT法などで数日かけて製造されるため、生産コストが高いからです。
Q2. セラミックSiCは導電性がありますか?
基本的には半導体的な導電性を持ちますが、電気用途よりも構造用途に特化しています。
Q3. 両者を組み合わせて使用することはありますか?
あります。例えば半導体装置内部の治具には陶瓷SiC、電子部品には半導体SiCが使われます。
まとめ
陶瓷炭化ケイ素と半導体炭化ケイ素は、同じ化学式を持ちながら全く異なる用途を担う材料です。 前者は構造・耐熱分野の「機械の骨格」、後者は電子・エネルギー分野の「頭脳」と言えます。
CanAbrasiveは、セラミック用途向けの高純度炭化ケイ素研磨材を提供し、 セラミック材料産業や 電子産業向けの原料供給を行っています。