4H-SiCと6H-SiCの違いは何ですか?

炭化ケイ素(SiC)概述

炭化ケイ素(SiC)は、炭素とケイ素から構成される化合物半導体であり、ワイドバンドギャップ(WBG)材料として注目されています。その優れた硬度、熱伝導性、電気的特性により、自動車、再生可能エネルギー、航空宇宙、電子機器など幅広い分野で利用されています。

炭化ケイ素の結晶構造

SiCの特徴は、多形(ポリタイプ)と呼ばれる多様な結晶構造を持つことです。同じ化学式であっても、積層順序の違いによって物理・電気的特性が変化します。代表的なポリタイプが「4H-SiC」と「6H-SiC」です。

炭化ケイ素の種類

200種類以上のポリタイプが存在しますが、産業的に重要なのは以下です:

  • 3C-SiC:立方晶。研究開発用。
  • 4H-SiC:六方晶。現在のパワー半導体で主流。
  • 6H-SiC:六方晶。初期研究や高周波用途。

4H-SiCと6H-SiCの違い

1. 結晶構造

両者は積層順序の違いにより分類されます:

  • 4H-SiC:ABCBの積層構造。c軸方向の対称性が高く、高電子移動度を持つ。
  • 6H-SiC:ABCACBの積層構造。対称性が低く、電子移動度は4Hより低い。

2. 物理特性

特性 4H-SiC 6H-SiC
バンドギャップ (eV) 3.26 3.02
熱伝導率 (W/mK) 370–490 370–490
モース硬度 9.0 9.0

3. 電気特性

特性 4H-SiC 6H-SiC
電子移動度 (cm²/Vs) ~1000 ~400–600
絶縁破壊電界 (MV/cm) 2.5–3.0 2.0–2.5
飽和ドリフト速度 (×10⁷ cm/s) 2.0 1.5–1.8

応用分野

  • 4H-SiC:EV用インバータ、再生可能エネルギー用パワーMOSFET、ショットキーダイオード、航空宇宙。
  • 6H-SiC:RFデバイス、マイクロ波アンプ、センサー素子。

4H-SiCと6H-SiCの比較まとめ

4H-SiCはパワー半導体の分野で主流であり、大口径ウェハの量産が進んでいます。一方6H-SiCは高周波・センサー領域にニッチ用途として残っています。産業的には4H-SiCがデファクトスタンダードです。

結論

4H-SiCと6H-SiCは同じSiCでありながら、結晶構造の違いにより性能と応用分野が異なります。4H-SiCは高効率パワーデバイスに不可欠、6H-SiCは特定のRF分野で活用され続けると予測されます。

よくある質問(FAQ)

  • なぜ4H-SiCが主流なのですか?
    高電子移動度と高電界耐性を兼ね備え、パワー半導体に最適だからです。
  • 6H-SiCは今でも使われていますか?
    量産パワーデバイスではほとんど使われませんが、マイクロ波やセンサー用途では研究開発が続いています。
  • SiCの他のポリタイプは?
    3C-SiC(立方晶)などがありますが、主に研究段階です。

お見積り・サンプルのご依頼