4H-SiCとは?炭化ケイ素の結晶構造・単結晶・密度をわかりやすく解説

Quick Answer

4H-SiC(フォーエイチ・エスアイシー)は、炭化ケイ素(SiC:シリコンカーバイド)の代表的な単結晶構造の一つであり、 六方晶系に属します。 高耐圧・高温・高周波動作に優れるため、現在のSiCパワー半導体の主流材料として用いられています。

SiC(炭化ケイ素)とは

炭化ケイ素(Silicon Carbide, SiC)は、ケイ素(Si)と炭素(C)が1:1の比率で結合した化合物です。 高硬度・高熱伝導率・高耐圧性・化学的安定性を併せ持ち、第三世代半導体の代表素材として注目されています。

従来のシリコン(Si)よりも広い禁帯幅(3.2 eV前後)を持ち、高温・高電圧・高周波の環境下で優れた性能を発揮します。 これにより、電気自動車(EV)や再生可能エネルギー装置における省エネ・高効率化を支えています。

4H-SiCの結晶構造の特徴

4H-SiCの結晶構造の特徴

4H-SiCは、炭化ケイ素の中でも最も広く利用されている多型(ポリタイプ)で、六方晶系(Hexagonal system)に属します。 同じ化学式SiCであっても、原子の積層順序により物理特性が異なることが知られています。

1. 基本構造単位

4H-SiCは、ケイ素(Si)と炭素(C)原子が共価結合で構成する四面体(Si-C₄, C-Si₄)を基本単位としています。 各Si原子は4個のC原子、各C原子は4個のSi原子と結合し、堅牢な三次元ネットワークを形成します。

2. 原子層の堆積順序

4H-SiCの層状構造は「abcb」という周期で積み重なります。 すなわち、Si–Cの二原子層が4層ごとに1周期を繰り返し、六方晶のc軸方向に沿って周期的に配列します。 この独特な積層構造が4H-SiCの結晶対称性電子移動特性を決定しています。

3. 結晶パラメータ

  • a軸:3.079 Å
  • c軸:10.053 Å(4層周期)
  • 結晶系:六方晶(Hexagonal)

4H-SiCは他の多型(6H-SiC、3C-SiCなど)と比較して格子歪が小さく、電子移動度と耐圧特性のバランスが優れています。

4. エネルギーバンド構造と電気的特性

物性項目 4H-SiC Siとの比較
禁帯幅(Eg) 3.26 eV Siの約3倍
絶縁破壊電界 約3 MV/cm Siの約10倍
電子飽和速度 2×10⁷ cm/s Siより高速
熱伝導率 4.9 W/cm·K 優れた放熱性能

このような性質により、4H-SiCは高温・高電圧・高周波環境で安定動作できる次世代半導体材料として最適です。

5. 結晶欠陥と安定性

SiCの単結晶成長中には、温度や圧力の微細な変動により、6H-SiCや15R-SiCなど他の多型が混入する場合があります。 これを防ぐため、PVT法やCVD法による成長条件を厳密に制御し、温度勾配・ガス流組成・成長速度を最適化する必要があります。

高品質な4H-SiC結晶は、結晶欠陥が少なく、長期信頼性の高いパワー半導体デバイスの実現に不可欠です。

単結晶SiCの製造と特性

単結晶SiCは主に物理気相輸送法(PVT法)で製造されます。 この方法では、高温(2000〜2500°C)下でSiC粉末を昇華させ、種結晶上で再結晶化させます。 成長速度は遅く(数mm/日)、高品質な単結晶インゴットを得るには高度な温度制御技術が必要です。

得られた単結晶インゴットはスライスされ、研磨・洗浄を経てSiCウェーハとなります。 その後、エピタキシャル成長(Epi)によりデバイス層が形成され、MOSFETやショットキーダイオードへと加工されます。

SiCの密度と物性値

項目 4H-SiC
密度 3.21 g/cm³
モース硬度 9.2〜9.5
ヤング率 410 GPa
熱膨張係数 4.0×10⁻⁶/K

この高密度・高強度の特性により、4H-SiCは極端な温度や機械的負荷下でも形状安定性を維持します。

4H-SiCの主な用途

  • EVインバータ・DC-DCコンバータ:高効率化・軽量化を実現。
  • 産業用モータ制御:高周波動作によりエネルギー損失を削減。
  • 再生可能エネルギー:太陽光・風力インバータなど高電圧変換装置に利用。
  • RF/5G通信:高周波・高耐圧アンプに最適。
  • 航空宇宙・防衛:高温下でも動作するセンサー・電源制御ユニット。

緑色炭化ケイ素黒色炭化ケイ素粉末は、 これら単結晶SiCウェーハの研磨・切断プロセスに欠かせない材料です。

FAQ(よくある質問)

Q1. 「4H-SiC」の「4H」とは何を意味しますか?

Si-Cの原子層が4層周期で積層された六方晶構造を表します。「H」はHexagonalの略です。

Q2. SiCの密度はいくらですか?

約3.21 g/cm³です。4H-SiCと6H-SiCでほぼ同じ密度を持ちます。

Q3. 4H-SiCはどのような分野で使われていますか?

EV用インバータ、光伏インバータ、産業用モータ、高周波通信など、広い分野で採用されています。

Q4. SiCはどのように発音しますか?

日本語では「エス・アイ・シー」、化学的には「炭化ケイ素(たんかけいそ)」と読みます。

まとめ

4H-SiCは、炭化ケイ素の中でも最も性能バランスに優れた単結晶構造です。 高耐圧・高周波・高温特性を兼ね備え、次世代パワー半導体の中心的役割を担っています。

CanAbrasiveでは、半導体・セラミック用途に適した 高純度SiC粉末高精度アルミナ研磨材を提供し、 SiCウェーハや電子部品製造を支援しています。

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