研磨剤の種類は大きく分けて「天然研磨材」と「人工研磨材」の2つに分類されます。 天然にはガーネットやエメリー、人工にはアルミナ、炭化ケイ素、ダイヤモンド、CBN、酸化セリウムなどがあります。硬度・粒度・純度によって性能が変わり、金属加工から光学レンズ研磨まで幅広い分野で利用されています。
研磨剤とは?
研磨剤(abrasives)は、物体表面を削ったり滑らかにしたりするための粒状または粉末の材料を指します。 金属・木材・ガラス・プラスチック・電子部品などあらゆる産業で使用され、仕上げの品質やコスト効率を大きく左右します。
主に硬度(モース硬度)・粒度(FEPA/JIS規格)・純度によって性能が決定され、目的に応じて最適な種類を選択する必要があります。
天然研磨材の種類
天然由来の研磨材は比較的柔らかく、コストが低いのが特徴です。
- エメリー(天然コランダム): 主成分は酸化アルミニウム。昔から砥石として利用。
- ガーネット: 木工用サンドペーパーに使用。柔らかく加工面を傷つけにくい。
- トリポリ: 炭酸カルシウムを含む堆積岩。光沢仕上げやポリッシングに使用。
人工研磨材の種類
人工研磨材は工業的に製造され、均一性と性能の安定性に優れています。
- アルミナ (Al₂O₃): 白色アルミナ(高純度で精密研磨向け)、褐色アルミナ(靭性が高く鋼材研削向け)。
- 炭化ケイ素 (SiC): 黒色(コスト効率重視)、緑色(高純度で光学・セラミック用)。
- ダイヤモンド: 天然・人工ともに最高硬度を持ち、半導体や超硬材料の精密研磨に不可欠。
- CBN (立方晶窒化ホウ素): ダイヤに次ぐ硬度。鉄系材料に特化した研削材。
- 酸化セリウム: ガラスや光学レンズ研磨に使用。柔らかく光沢仕上げに適する。
- ジルコニア: 靭性が高く、粗研削や耐摩耗部材に利用。
代表的な研磨剤の比較表
研磨材 | モース硬度 | 特徴 | 主な用途 |
---|---|---|---|
白色アルミナ | 9 | 高純度・脆性・精密加工向け | 電子部品・光学 |
褐色アルミナ | 9 | 不純物含む・靭性高い | 鋼材研削・サンドブラスト |
炭化ケイ素 | 9–9.5 | 鋭い切削力・脆性 | 金属・セラミックス研磨 |
ダイヤモンド | 10 | 最高硬度・超精密用途 | 半導体・光学レンズ |
CBN | 9.5 | 鉄系に強い・耐熱性高 | 工具研削・鋼材加工 |
酸化セリウム | 6 | 柔らかい・光沢仕上げ | ガラス・レンズ研磨 |
ガーネット | 7 | 天然・比較的柔らかい | 木工・塗装下地処理 |
用途別の選び方
研磨剤は加工対象や仕上げレベルによって選定されます。
- 金属加工: 褐色アルミナ、炭化ケイ素、CBN
- 精密研磨: 白色アルミナ、緑色SiC、ダイヤモンド
- 光学・ガラス: 酸化セリウム、緑色SiC
- 木材加工: ガーネット、トリポリ
- 高温用途: アルミナ耐火材、ジルコニア
研磨剤選定チェックリスト
- 対象材料は金属か、非金属か?
- 粗研削か、精密仕上げか?
- コスト重視か、性能重視か?
- 再利用性や環境影響はどうか?
- 規格(FEPA/JIS/ANSI)に合致しているか?
よくある質問(FAQ)
研磨剤の粒度はどう決まりますか?
FEPAやJIS規格に基づき、F番号やμm単位で規定されます。
最も硬い研磨剤は?
ダイヤモンドです。モース硬度10で、あらゆる物質の中で最も硬い。
天然と人工研磨材の違いは?
天然はコストが低く柔らかめ、人工は純度や粒度を制御でき、安定した性能を発揮します。
CBNはどんなときに使いますか?
鉄系合金の研削で優れた性能を発揮し、工具寿命を大幅に延ばします。
参考文献・規格
- JIS R 6001: 研磨材規格
- FEPA Standard: Abrasives Grain Size
- ISO 8486: Abrasives — Grain Size Distribution
- ASM Handbook: Properties of Abrasives