Quick Answer:炭化ケイ素(SiC)は、炭素とケイ素が1:1で結合した共有結合性のセラミックスで、高硬度・高耐熱・高熱伝導・低熱膨張・耐酸化・半導体特性を兼備。古くから研磨/研削材・耐火材に使われ、近年は高耐圧・高温動作が必要なパワー半導体でも注目されています。
SiCの概要
炭化ケイ素(Silicon Carbide, SiC)は、天然にはほとんど産出しない人工セラミックスです。非常に硬く、高温下でも安定に使用でき、熱をよく伝える一方、温度変化による寸法変化は小さいという特性を持ちます。このため、研磨粒子・砥石に代表される研磨/研削用途、耐火れんがやキルン家具など耐火材用途に広く用いられてきました。さらに、材料自体が半導体であることから、ワイドバンドギャップ材料としてパワー半導体分野のキーデバイス材料としても重要性が増しています。
主要特性(プロパティ)
高硬度(新モース硬度13)
SiCは世界でも上位の硬さを持つ材料群に属します。新モース硬度は13で、ひっかき試験における耐傷性が高く、研磨・研削粒として被削材の切削や整形に適しています。比較として、ダイヤモンドは15、炭化ホウ素は14、溶融アルミナは12が代表値です。
低熱膨張(熱衝撃に強い)
20℃付近の線膨張係数は約4.5×10-6/℃で、金属材料に比べて低く、寸法変化が小さい特性があります。高熱伝導と相乗し、温度勾配による応力集中が起こりにくいため熱衝撃抵抗に優れます。
高耐熱(高温安定性)
空気中で約1,600℃まで安定に使用可能で、代表的な分解温度は約2,545℃。高温環境での構造部材や発熱体にも適性があります。
高熱伝導
焼結体SiCの熱伝導率は最大 〜270 W/m・K程度に達し、セラミックスとしては非常に高い部類です。放熱・均熱が重要な工程/部材で威力を発揮します。
耐酸化性
SiCは高温酸化で表面に緻密なSiO2保護膜を形成し、酸化進行を抑制します。粒度や雰囲気により挙動は変化しますが、一般に700℃以上で酸化が顕著になります。
半導体特性(ワイドバンドギャップ)
SiCはSiに比べて広いバンドギャップ、高い絶縁破壊電界、高い熱伝導率を持つため、高温・高耐圧動作のパワーデバイスに適します。
主な用途
- 研磨・研削:レジン/ビトリファイド/メタルボンド砥石、研磨布紙、ラッピング、ブラスティング
- 耐火材:耐火れんが、棚板、キルン家具、スライドゲート/ノズル等の耐火構造材
- 発熱体:SiCヒーター、炉内治具
- 半導体関連:基板/エピ層、ヒートシンク、拡散プレートなど放熱・高温部材
代表データ(比較表)
新モース硬度(代表)
新モース硬度 | 物質名 |
---|---|
12 | 溶融アルミナ |
13 | 炭化ケイ素 |
14 | 炭化ホウ素 |
15 | ダイヤモンド |
※新モース硬度:既知の硬さ物質でひっかき試験を行う相対指標。
熱膨張率の比較(20℃付近の代表値)
物質名 | 組成 | 線膨張係数 [10-6/℃] |
---|---|---|
溶融シリカ | SiO2 | 0.5–1.4 |
ダイヤモンド | C | 1.0 |
六方晶窒化ホウ素 | h-BN | 1.5–3 |
窒化ケイ素 | SiN | 2–3 |
炭化ケイ素 | SiC | 4.5 |
アルミナ | Al2O3 | 6–9 |
鉄 | Fe | 11.8 |
アルミニウム | Al | 23.1 |
熱伝導率のイメージ(代表値)
- 焼結SiC:〜270 W/m・K
- アルミナ:20–35 W/m・K(組成・焼結条件で変動)
- 金属Al:200 W/m・K 近傍
※各値は文献代表値。組成・微細構造・測定条件で変動します。
FAQ(よくある質問)
- Q1. 黒色SiCと緑色SiCの違いは?
- A. 一般に黒色SiCは靭性が高く、鋳物バリ取りなどの一般研削に適し、緑色SiCは高純度で硬脆材の精密研磨に向きます(粒度・結合剤・用途で要最適化)。
- Q2. 熱衝撃に強い理由は?
- A. 高熱伝導率と低熱膨張率の組合せにより温度差起因の内部応力が生じにくいためです。
- Q3. 半導体用途のSiCと研磨用SiCは同じ?
- A. 化学式は同じですが、半導体用は高純度・低欠陥・結晶性など厳格な要件があり、グレードや工程が大きく異なります。
参考文献例:日本学術振興会 編『SiC系セラミック新材料』(2001)/『耐火物』第47号(1995) ほか一般的材料データ集
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