Quick Answer: 炭化ケイ素粉末(SiC Powder)は、炭素(C)とケイ素(Si)の化合物であり、非常に高い硬度・導熱性・耐熱性を持つ機能性セラミックスです。 その高い熱衝撃抵抗と電気的特性により、研磨材・耐火材・半導体・電力電子・高温構造材などに広く利用されています。
目次
1. 炭化ケイ素粉末とは
炭化ケイ素粉末(Carborundum, SiC)は、炭素とケイ素が結合した化合物で、磨料コード「C」としても知られます。 高硬度(モース硬度9.2〜9.5)を持ち、機械的・熱的に優れた特性を示します。 主に機能性セラミックス、研磨材、耐摩耗材として使用され、電子材料分野でも注目されています。
2. 結晶構造と物理特性
SiCの結晶は、炭素原子とケイ素原子が四面体構造で結合した六方晶系を形成します。 この強固な共有結合により、SiCは高強度・高弾性率・低密度を兼ね備えています。 また、化学的にも安定で、酸・アルカリに対して高い耐食性を持ちます。
項目 | 代表値 |
---|---|
モース硬度 | 9.2–9.5 |
比重 | 3.2 g/cm³ |
嵩密度 | 1.2–1.6 g/cm³ |
結晶系 | 六方晶(α-SiC) |
外観 | 黒色〜灰緑色粉末、虹色光沢あり |
融点(自由Siを含む) | 約 2600°C |
使用温度 | 〜1900°C |
熱伝導率 | 60–200 W/m·K(結晶構造により変動) |
熱膨張率 | 7–9 ×10⁻⁶ /°C(0–1600°C) |
溶解性 | 水・酸・アルコールに不溶 |
3. 熱衝撃抵抗と熱特性
SiCは、高い熱伝導率(120–270 W/mK)と低熱膨張率(4×10⁻⁶/°C)を兼ね備えています。 これにより、急激な温度変化による内部応力に強く、優れた熱衝撃抵抗性を発揮します。
SiCの熱衝撃抵抗性は、「高導熱」「低膨張」「高強度」という3つの特性の相乗効果により生まれます。 温度変化が急な環境下でも、材料の破壊や微細亀裂の発生を最小限に抑えられます。 そのため、SiCは熱交換器、ロケットノズル、燃焼バルブ、内燃機関部品などの高温構造材として広く採用されています。
4. 高温での応用
SiCは比強度が高く、軽量で、耐食性にも優れているため、 1650°Cを超える環境下でも機械的特性を維持します。 この特性により、SiCは以下の分野で使用されています:
- 高温炉の炉材・断熱材
- 熱交換器・燃焼チャンバー
- 内燃機関バルブ・ロケットノズル
- 電子デバイス用基板・絶縁体
5. 電力電子分野でのSiC応用
SiCは、高臨界電界強度・高熱伝導率・広バンドギャップを持つ次世代半導体材料です。 シリコン(Si)を置き換える材料として注目されており、高電圧・高温動作が可能なパワーデバイスの実現を支えています。
従来のSiデバイスに比べ、SiCパワーデバイスは:
- 低いオン抵抗で高電流を制御
- 高電圧動作が可能(小型化・軽量化に寄与)
- スイッチング損失と発熱を低減し、冷却コストを削減
- 高温環境下でも信頼性が高い
そのため、SiCは電動車(EV)、インバータ、モータドライブ、再生エネルギーシステムなどに幅広く利用されています。
FAQ(よくある質問)
- Q1. 炭化ケイ素粉末と炭化ケイ素研磨材の違いは?
- A. 粉末は主にセラミックスや電子用途向けの原料で、研磨材は特定粒度に整粒された加工用途品です。
- Q2. 炭化ケイ素はどのくらいの温度に耐えられますか?
- A. 約1900℃まで安定して使用できます。短時間であればさらに高温にも耐えます。
- Q3. SiCはどんな形で供給されていますか?
- A. 粉末(μm〜nm級)、粒状(F12〜F1200)、焼結体など、用途に応じて多様な形態があります。