黒色炭化ケイ素と緑色炭化ケイ素の違い

黒色炭化ケイ素と緑色炭化ケイ素の違い: 黒色SiCはコスト効率に優れた汎用材で主に鋼材研削や耐火材に使用され、緑色SiCは高純度で結晶が鋭利なため精密研磨や光学ガラス加工に最適です。製法・純度・硬度・用途が大きな違いです。

黒色と緑色炭化ケイ素の基本概要

炭化ケイ素(SiC)は、石英砂と石油コークスを主原料に電気抵抗炉で製造される化合物で、黒色と緑色の2種類が代表的です。両者は同じ原料から作られますが、精製方法と結晶性の違いにより、用途と性能が大きく異なります。

原料・製法の違い

両者の主な違いは精製剤(食塩)の有無にあります。

  • 黒色炭化ケイ素: 石英砂+石油コークスをそのまま焼成。不純物が多めで結晶は不規則。
  • 緑色炭化ケイ素: 同じ原料に食塩を加えて精製し、不純物を除去。高純度で鋭利な結晶が得られる。

物性・結晶構造の比較(含3C/4H/6H)

項目 黒色炭化ケイ素 緑色炭化ケイ素
純度 95–97% 98–99.5%
モース硬度 約9.0 約9.5
比重 3.15–3.20 g/cm³ 3.20–3.25 g/cm³
結晶形態 不規則、粒子やや丸み 鋭角でシャープ
色調 黒色~暗灰色 緑色~透明感あり

結晶多形(ポリタイプ)と産業応用

ポリタイプ 結晶系 特徴 用途例
3C-SiC 立方晶 低温で形成、安定 研磨粉、基板
4H-SiC 六方晶 高耐圧、高電子移動度 パワー半導体
6H-SiC 六方晶 耐熱性が高く安定 高温構造材

用途の違い(研削 vs 精密研磨)

  • 黒色炭化ケイ素: 主に鋼材研削、鋳造品仕上げ、サンドブラスト、耐火材用途。コスト重視の大量消費型。
  • 緑色炭化ケイ素: 光学ガラス・セラミックの精密研磨、半導体分野。高純度・高精度用途向け。

製造ルートと形態

代表的な製造ルート:

  • Acheson法(電気抵抗炉法)
  • CVD法(高純度粉末製造、半導体用)
  • 焼結法(セラミック部品やブロック成形)

形態としては、粉末(マイクロパウダー)、グリット、ブロック、ペレットが一般的です。

選定のポイントと比較表

選定時に考慮すべき要素:

  • 純度とコストのバランス
  • 用途:大量研削か高精度加工か
  • 粒度規格(FEPA/JIS/GB対応)
  • 供給形態(粉末、グリット、ブロック)
選定要素 黒色炭化ケイ素 緑色炭化ケイ素
コスト 低価格 高価格
純度 95–97% 98–99.5%
推奨用途 鋼材研削、鋳造品 光学、精密研磨

よくある質問(FAQ)

黒色と緑色SiCの見分け方は?

外観で色調が異なり、黒色は暗灰色、緑色は透明感のある緑色です。用途や純度も異なります。

価格差はどのくらいですか?

黒色は緑色に比べて約20–40%安価で、大量用途向けに選ばれます。

半導体用にはどちらが使われますか?

主に高純度緑色SiC、またはCVD製造されたSiC粉末が利用されます。

参考文献・規格

  • JIS R 6111: 炭化ケイ素研削材規格
  • FEPA Standard: F4–F1200 粒度規格
  • ISO 9286: Abrasives — Specification for SiC
  • Springer: "Silicon Carbide: Structure, Properties and Applications"

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