褐色電融アルミナ(BFA)完全ガイド ― 特長・性質・用途を徹底解説

本ガイドでは、褐色電融アルミナ(BFA=Brown Fused Alumina) の構造・物性・製造プロセスから、 ブラスト耐火材研削ホイール などの代表的な用途まで、 幅広い産業分野での活用方法を解説します。CanAbrasive は高純度 BFA を日本・世界市場に安定供給しています。

Quick Answer: 褐色電融アルミナ(BFA=Brown Fused Alumina)は、ボーキサイトを原料に電気アーク炉で溶融・冷却して得られる高靭性・高硬度のアルミナ系研磨材です。モース硬度はおおよそ9、真比重は3.90–3.95 g/cm³、耐熱性・耐摩耗性・耐薬品性に優れ、重研削・ショット/サンドブラスト・耐火材・鋳造・床材骨材まで幅広く使われます。

目次

1. 褐色電融アルミナ(BFA)とは

褐色電融アルミナ(BFA)は、高品位ボーキサイトを主原料とし、電気アーク炉で約2000℃以上に溶融後、冷却・破砕・分級して得られる人工コランダム(Al₂O₃主体)です。微量の酸化鉄(Fe₂O₃)や酸化チタン(TiO₂)を含むことで褐色の色調を示し、高靭性優れた耐摩耗性が特徴。鋼材の重研削、ショット/サンドブラスト、耐火材、セラミックボンド砥石、床材骨材など、過酷環境に向く“タフな研磨材”です。

2. BFAの主な特長(数値と理由)

  • ■ 高硬度(モース硬度 ≈ 9)
    ダイヤモンドやSiCに次ぐ高い硬さで、鋼・鋳鉄などの重研削・去バリ・表面粗化に有効。鋭い多角形破砕面を持ち、切削性と食いつきが安定します。
  • ■ 高靭性・長寿命
    コランダム結晶由来の耐欠損性が高く、ブラストでは循環回数が伸びやすい。ライン停止やメディア交換の頻度を抑え、ランニングコスト低減に寄与します。
  • ■ 耐熱性・耐火性
    アルミナの融点は約2050℃。高温下でも安定で、耐火れんが・キャスタブルなどの耐火材骨材としても実績があります。
  • ■ 耐薬品性・耐腐食性
    アルミナは化学的に安定で、一般的な酸・アルカリに対して耐性を持ちます(条件により例外あり)。化成処理前の前処理ブラスト用途でも扱いやすい研磨材です。
  • ■ 熱膨張率は中庸で扱いやすい
    熱膨張率(代表値 7–8×10-6/K)は金属より低いものの、セラミックスとしては中庸。熱サイクル下でも寸法安定性が維持しやすい点がメリット。
  • ■ 絶縁体特性
    BFAは電気絶縁性に優れ、エポキシ床材や耐摩耗塗料、絶縁フィラーなどへの配合でも採用例があります。
  • ■ コスト・入手性のバランスが良い
    高純度の白色溶融アルミナ(WFA)に比べ、BFAはコストと性能のバランスに優れ、重研削や前処理ブラストなど“費用対効果”が問われる現場に適します。

3. 代表的な物性値(参考値)

項目 代表値・備考
主成分 Al₂O₃(おおよそ 95–96.5%)
真比重 3.90–3.95 g/cm³
嵩密度 1.50–2.10 g/cm³(粒度・整粒方法に依存)
モース硬度 ≈ 9
ヌープ硬度 約 1800–2100 kg/mm²(結晶方位や焼結条件で変動)
熱膨張係数 7–8 ×10-6/K(代表値)
熱伝導率 おおよそ 20–30 W/m·K(焼結体・粒度により変動)
融点 約 2050℃(Al₂O₃の融点)
電気特性 高抵抗の絶縁体
形状 鋭い角を持つ砕石状、ブロッキー(blocky)
色調 茶褐色(微量成分による)

※上記は代表値です。原料品位、炉条件、破砕・整粒条件、粒度分布などにより変動します。仕様確認はTDSをご参照ください。

4. 製造プロセス(電融→破砕→分級)

  1. 原料選別: 高品位ボーキサイトと補助原料の選定・調合。
  2. 電融: 電気アーク炉にて約2000℃以上で溶融し、コランダム結晶を形成。
  3. 冷却・粗破砕: インゴットを冷却し、一次破砕で適正サイズへ。
  4. 整粒・磁選: 破砕・ふるい分け・気流分級・磁選で粒度分布と清浄度を管理。
  5. 品質管理: 化学成分、粒度分布、嵩密度、金属不純物などを検査。
  6. 袋詰・出荷: 25kg紙袋、1tフレコンなどに充填し出荷。

5. 用途別の使いどころと推奨粒度

  • 重研削(レジン/ビト砥石): F16–F60
    高靭性により欠けにくく長寿命。鋳鉄・炭素鋼の重研削に適します。
  • ショット/サンドブラスト: F24–F120(用途によりF220付近まで)
    表面粗化、塗装前処理、酸化スケール除去に。循環回数が伸びやすくメディア消費を抑制
  • 耐火材骨材・キャスタブル: 粗粒~粉末(ブレンド)
    高温強度・耐摩耗・耐食性が必要な箇所の骨材に。
  • 床材・防滑骨材: 粗粒~中粒
    高硬度・耐摩耗・耐薬品性を活かした工場床・防滑仕上げに。
  • 鋳造・鋳肌仕上げ: 中粒~微粉
    シェルモールドや仕上げ用の研磨材として。

6. BFAとWFAの違い(使い分け)

項目 BFA(褐色電融アルミナ) WFA(白色溶融アルミナ)
純度 Al₂O₃ 95–96.5% Al₂O₃ 99% 以上が一般的
靭性 高い(タフ) 中~やや高(切れ味寄り)
切削性 重研削・前処理向け 精密研磨・低汚染仕上げ向け
コスト コスト効果が高い 高純度ゆえ相対的に高め
代表用途 重研削、ブラスト、耐火材 精密研削、ステンレス仕上げ、電子・医療分野

7. 粒度・形状・再利用性の考え方

  • 粒度選定: 粗いほど切削量は大きく、表面粗さも大きい。仕上げには細粒を選択。
    例)塗装前処理のアンカー形成:F24–F60、微細な梨地:F80–F120
  • 形状: BFAは砕石状で鋭いエッジを持ち、初期の食いつきが良い。整粒や造粒で嵩密度・流動性を最適化できます。
  • 再利用性: 靭性が高く、適切な回収・粉塵分級・異物除去により循環使用回数の延伸が可能。トータルコストを抑制します。

8. 取扱い・SDS/TDS

BFAは不燃性の無機粉体ですが、粉じん暴露は抑えるべきです。取り扱い時は防じんマスク・保護メガネ・手袋の着用、局所排気やこぼれ対策を推奨します。保管は乾燥環境・直射日光を避け、開封後は密封してください。詳細は製品別のSDS/TDSをご参照ください。

9. FAQ(よくある質問)

Q1. BFAの標準粒度レンジは?
A. FEPA F12–F220 を中心に、より粗粒・微粉、マイクロパウダーまで対応が可能です。用途(重研削、ブラスト、仕上げ)に合わせてご提案します。

Q2. BFAは何回くらい再利用できますか?
A. 設備・回収条件・対象材によって差がありますが、BFAは靭性が高く、一般的に循環回数が伸びやすい研磨材です。粉塵の分級、異物除去、破砕粒の入れ替えを適切に行うことで、総コストの最適化が可能です。

Q3. ステンレスの前処理にはWFAの方がよいですか?
A. 低鉄・低汚染を重視する仕上げ工程ではWFAが優位な場面があります。一方で前処理の生産性・コストを優先する場合、BFAが適するケースも多く、現場条件での使い分けを推奨します。

Q4. 耐火用途での使用ポイントは?
A. 粗粒~微粉を配合設計し、熱間強度・耐摩耗・耐食性など要求特性を満たす骨材としてご利用ください。バインダーや微粉比率の最適化で性能が大きく変わります。

Q5. 価格や納期は?
A. 粒度、等級、荷姿(25kg紙袋/フレコン)、数量、港条件によって変動します。お見積り時に用途・粒度・年間使用量・納入先をご提示ください。


関連リソース:
BFA Guide(本ページ)BFA vs WFA:違いと選び方BFAのブラスト用途製品ページ:褐色電融アルミナ(BFA)

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